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2006 年01 月12 日

脱法ドラッグ初告発へ

1月11日の日経夕刊に、「若者の乱用が懸念されている脱法ドラッグ「RUSH」を米国から大量に輸入したとして、厚生労働省は輸入業者を薬事法違反(医薬品無許可販売など)の疑いで告発する方針を固めた。」「RUSHは無許可医薬品の亜硝酸エステル類を含有する揮発性の液体。アダルトショップなどで「芳香剤」「ビデオヘッドクリーナー」などの名目で販売され、性的快感を高める目的で若者の間で乱用されているという。」「厚生労働省は昨年10月、輸入業者に販売中止や自主回収などを指導したが、業者は「輸入しているのは脱法ドラッグではなく芳香剤」として指導に応じないため、刑事告発することにした。」「厚生労働省は成分の有害性を確認した脱法ドラッグは麻薬や向精神薬に指定し、麻取法で規制しているが、指定までに1年以上かかるため、薬事法での取締を強化。」と報道されていた。

 脱法ドラッグを取り締まるという政策はもっともなことだ。問題は、その手法にある。
 この事件で問題とされた輸入業者の行為は、薬事法24条「薬局開設者又は医薬品の販売業の許可を受けた者でなければ、業として、医薬品を販売してはならない。」に違反しているということなので、問題は「RUSH」が「医薬品」に当たるかどうかだ。新聞では、簡単に「RUSHは無許可医薬品の亜硝酸エステル類を含有する揮発性の液体」と厚生労働省発表を鵜呑みにした記事になっているが、ここが一番の問題だ。条文としては薬事法2条3号。「RUSH」が「人又は動物の身体の構造又は機能に影響を及ぼすことが目的とされている物」にあたるのか。輸入業者の主張するように、「RUSH」が「芳香剤」としての目的で製造販売されているものだとすれば、「医薬品」には当たらない。これはいわゆるあんパンに用いるゴム糊(トルエン)が、シンナー薬物として若者に使用されているからといって、「医薬品」とはされないのと同じだ。ゴム糊を若者があんパンに使用することが分かっていて販売したとしても、無許可医薬品販売に当たるとはよもや厚生労働省も言わないだろう。

 次に、厚生労働省は、輸入業者に販売中止や自主回収を指導したが指導に応じないので刑事告発したという。しかし、厚生労働省が「RUSH」が「医薬品」にあたると判断しているのであれば、薬事法69条の3に基づき、厚生労働大臣は、医薬品による保健衛生上の危害の発生又は拡大を防止するため必要があると認めるときは、医薬品販売業者に対して、医薬品の販売を一時停止することその他保健衛生上の危害の発生又は拡大を防止するための応急の措置を採るべきことを命ずることができるのであるから、捜査当局に丸投げするのではなく、自らの責任で行政措置をすべきであろう。

 しかも、麻取法で規制するには時間がかかるから薬事法で取締を強化するというのも、本末転倒だ。目的のために手段・手続は選ばないという、別件逮捕のようなやり方は、いい加減に慎むべきだろう。

ついでに言えば、日経新聞には「脱法ドラッグとは、快感を高める作用や幻覚作用があるとされるが、麻薬や覚せい剤とは異なり、法律で明確に所持や使用が禁止されていない薬物。」「脱法ドラッグとの呼称が法の網から逃れているとの誤解を与えるとして、厚生労働省は違法ドラッグと改めることを決めている。」とあった。しかし、薬事法で禁止されているのは「医薬品」の販売等であって、所持や使用ではない。しかも、「医薬品」に限られる。法の根拠もなしに、取締目的のために勝手に「違法」というネーミングをするのは、明らかに法治主義に反している。それとも、厚生労働省の決定が「法」なのか。いつまで経っても、日本は法治主義を理解しない、人治主義の国家だ。

投稿者:ゆかわat 23 :52| ビジネス | コメント(2 )

◆この記事へのコメント:

◆コメント

ゆかわさん

始めまして。
「人治主義」っていう言葉、初めて知りました。

陪審員制度なんかは「リンチ主義」ではないか?と疑問を持っておりますが、法の専門家からみて陪審員制度にはどのような見解をお持ちでしょうか?
お時間のある時で結構ですからブログとして掲載していただきたい。

投稿者: のどぐろ : at 2006 /01 /13 09 :44

◆コメント

 ホームページの方の「非常勤裁判官日誌」を読んで,感想を述べさせて頂きます。

 はっきり言って,事件の内容のみならず,御自身はもちろんのこと,当事者や調停委員の言動を詳細に紹介しすぎており,守秘義務に違反しているのではないですか。

 非常勤とはいえ,裁判官と名乗っている以上,違法な行為は許されないと思います。

 

投稿者: ゆとりろ : at 2006 /01 /18 03 :14

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